
この業界に入られたきっかけについて教えていただけますか?
もともと写真が好きで、いろんな場所に行くことが趣味でした。大学卒業後、求人誌で仕事を探している時にロケーションコーディネートという言葉に偶然、目が止まりました。当時、この業界について全然知りませんでしたが、いろんな場所に行けるという条件に「こんないい仕事はほかにはないな」と思って飛び込みました(笑) それから今年で9年目になります。
具体的にロケーションコーディネートというのは、どんなお仕事ですか?
まずこちらに話が来るまでの流れの一例ですが、クライアントである企業から広告代理店
へとCM制作の発注がされます。それから制作会社が選ばれ、企画概要・タレント起用などの広告プランのプレゼンテーションが行われた後、決定したプランを基に、我々ロケーションコーディネーターへと依頼が来るわけです。要望に合ったロケ地候補の調査や、周辺住民への撮影協力のお願い、必要であれば道路、公園などの許可申請なども行います。それと同時に、撮影を円滑に進めるためのスケジュール調整も提案するのですが、最近は依頼から撮影まですべて1週間ほどで組み込まなければならない場合もありますね。
すべてを1週間で!? タイトなスケジュールですよね。当日の動きはどうですか?
うちはロケバスなどの車両とドライバーの提供もしていますので、スタッフやタレントさ
んの送迎もしています。あとは事前にトラブルがないように周辺住民の方々への徹底した
周知をしていますが、それでも突発的な問題が起きてしまう可能性もあるので、そういった場合の急な対応や、その都度の細かい事前準備も必要ですね。

CMや広告写真がメインと聞きましたが、映画やドラマと違う部分はありますか?
やはり、現場にスタッフが大勢いるということだと思います。撮影隊以外に、クライアントである企業の方々や広告代理店の方がいらっしゃる場合もありますし、そういった部分でより細かな配慮が必要とされますね。監督とクライアントさんのそれぞれが、設定やシチュエーションに強いこだわりがあるわけですから、それがピッタリと合致したものを作る現場は当然緊張感も高いですよね。そのため事前に入念なすりあわせをして、綿密なスケジュールをたてています。ほかにはCMの場合、クライアントである企業も様々なので、休憩時にお出しする飲食物類などにも配慮が欠かせませんね。
ロケ地の候補を挙げる際に、苦労されていることはありますか?
そうですね。やはり撮影することが難しい場所を希望されている時です。具体的には、オフィスや学校、古い日本家屋、洋館、空きマンションかなぁ。ロケなび!ではそういった施設の情報が更に増えてきているのでありがたいです。最近はロケ地探しから撮影までの期間も短くなってきているので、以前にも増してお世話になることが多くなってきていますよね。なかでも一番厳しいのは個人のお宅探しです。突然、「撮影させてください!」と言われても普通は嫌ですよね。
そんな中で、宮本さんが身につけた交渉術のような工夫はありますか?
工夫ですか…、たぶん自然体でいることだと思います(笑) 変に繕うような態度より
も、普通に明るく元気にという感じですね。やはり人と人との信頼関係が重要なので、正直にぶつかっていくことが大事だと思います。根気良く毎日顔を出して交渉していくうちに、撮影NGの場所でも最後はOKしてもらえることもありますしね。
なるほど。では宮本さんご自身がコーディネーターとして心がけていることは?
僕の場合ですが、例えばスチール撮影のロケハンをするときには、場所の雰囲気を一番重要視します。クライアントさんの希望ももちろんですが、カメラマンが感動するような場所を用意したいと考えます。当然プロのカメラマンは確かな技術を持っていらっしゃるので、あとは気持ちの部分をいかに盛り上げるかということです。撮る側が笑っていれば、被写体も自然と笑顔になりますよね。ロケをする以上はリアルなもの、自然な雰囲気を求められるわけですから。また、一番話す機会の多い制作部との信頼関係も大切にしています。というのも、何でも言い合えるような仲になれる環境づくりをすることで進行もスムーズになりますし、第一に現場は明るく楽しくないと。

では最後に、宮本さん個人としての目標と、すぺ~す百貨の今後の展開について教えていただけますか?
個人としては、カメラマンをやってみたいです。写真が好きなので(笑)。それから会社としては、うちの一番の強みであるロケーションのストックをより充実させていきたいですね。ほかにも、うちならではのサービスとして、ゼネレーターや照明などの撮影機材から、コード、テープ類の消耗品、テントやアルミイントレ、テーブルに椅子などロケに必要な備品類を多く取り揃えています。ロケ備品をここまで用意できるのはおそらく弊社しかありません。ロケ用車両のオプションとして、トイレカー(移動式トイレ)もありますので、どんな場所でのロケでも安心です。「すぺ~す百貨にまかせれば、ロケの準備はすべてOK」と、業界内での認知が広がっていき、もっと多くの方に利用していただきたいと思いますね。
【インタビューを終えて…】
お忙しい時期は、1チーム(現在、すぺ~す百貨さんでは4チームに分かれて稼働されているそうです)で月に7、8本の撮影を担当するという宮本さん。お話を聞いていて、撮影の起点となり細部にまで配慮するコーディネーターというお仕事はまさに“縁の下の力持ち”といった印象を受けました。今回、このインタビューのためにすぺ~す百貨さんの事務所へお邪魔したのですが、さすがはコーディネーター集団のオフィス! オシャレな内装や整理整頓された棚と机周りは、まさに画になる仕事場という感じでした。

株式会社すぺ~す百貨 / 宮本卓さんプロフィール
1977年生まれ。大学卒業後、株式会社すぺ〜す百貨コーディネート部に所属。様々な撮影のロケーションコーディネートを行う。今までに携わった作品は、CM、広告写真、ファッションカタログ、CDジャケット、タレント写真集、プロモーションビデオなど多数。
株式会社すぺ~す百貨のHPはこちら。
2009年7月 1日
聞き手/斎藤奨・宮川崇・山中純子