制作者インタビュータイトル
トップランナー・インタビュー第六弾は、今までに数々の連続ドラマに携われ、現在はフリーランスとして制作担当をされている鈴木さんに、ロケ場所探しの極意などあれこれお話をお伺いしました!
(聞き手/山中純子、宮川崇、斎藤奨)

今年で業界歴20年になられたという、大ベテランの鈴木さん。
始めに制作の業界に入られたのはどのような経緯からだったのですか?

映像専門学校の3年生の時、仕切り役を任されたのですが、講師の方に認めてもらえたのか「君は学校に来るよりも現場に行った方がいいよ!」と言われて。たまたま講師の方が大船撮影所で助監督をされていて、そのつながりで気付いたら大船の現場にいたという感じです。学生の時だったので「飯は食わせてやる」と言われ、一本目の仕事はタダ働きでしたね(笑)。
現場が楽しかったので学校には戻らずそのまま大船にいました。一年くらいいたのですが、新人にしては生意気な制作進行助手だったと思います(笑)。
その後はアルバイトをしたりちょっと現場から離れていたのですが、フジTV系列ドラマ『抱きしめたい! I WANNA HOLD YOUR HAND』を見ていたら、音響助手をやっている友人が“ウチトラ”(内輪のエキストラ)で出ていたんですね! その後偶然その友人と会いまして「何か仕事紹介して欲しい」とお願いしたら、ドラマの進行を探しているという話をもらい月9の『君が嘘をついた』という作品の進行を担当させてもらったのです。そこからですね、連続ドラマに関わるようになったのは。
その後、『愛しあってるかい!』(これも月9)というドラマの時に体調を崩して入院したのですが、その時ありがたいことにアベクカンパニーの楠田さんから「うちに来ないか?」とお誘いいただいて、19年在籍させていただき、つい最近フリーになりました。



鈴木さんは普段どのような方法でロケ場所を探されているのですか?

最近は自転車でロケ地探しをしています! エコというわけではなく、車で入れない場所があったり、歩きでは効率が悪いという理由からです。階段があっても(自転車を)担いでいけますしね。
場所が1つ決まってその周りでロケ、という時には周辺から道という道を隈なく周りますね。
ロケ場所の情報はすぐロケなび!などのインターネットで引っ張れるけれど、そこからイメージにぴったりな場所を引っ張ってこれるかというのはセンスが大事ですね。監督との相性もありますが、理解力も必要。台本で決まっている設定では、「本当にその場所でお芝居ができるのかどうか」とイマジネーションを働かせることが大事。
経験もあるかもしれないですけど、新人でも日頃から現場で盗んでいるか、普段からいろんなことを消化できてるか、それができていないとイマジネーションすることは難しい。そういうことがセンスですよね。
僕も未だに苦労します。監督とのやり取りや、その他にいろんな規制があるので、台本の中で「こういうことがやりたい」っていうのが実現できないことも多いです。時間も場所も限られた中で一生懸命やっているので、映像文化の一つとしてドラマをもっと認めてほしいなぁと思います(笑)。



日頃から何か意識されていることってあるのでしょうか?

今は仕事で使った場所はある程度データや地図を残して、何かあった時には見て思い出せるようにしています。
大船撮影所にいた時の最初の師匠に、「どこかで待合せをする時には早めに来て、一つ前の駅で降りろ」と言われたことを実は未だに心がけています。一駅分歩くだけで新たな場所を見つけられますよね。普段の考え方も同じで、いつも同じことをやるのではなく、アングルを変えて一つ手前で何かをやってみるんですね。そういう発想を大切にしています。
常々見ている新聞にもネタはあるんですよ。経済面でも何でも。『喰いタン2』の時は(主人公が)再登場する場所はどうしようか悩んでいて、たまたま新聞やTVで日本でも飛行船が借りられるっていうのを見付けて交渉しました。その時はスケジュールの調整上、結局は借りられなかったんですけど。時代劇をやる時も「頭を柔らかく、頭を柔らかく」って自分に言い聞かせて、固定観念を取るんですね。「ここで時代劇(の撮影)は無理だ」と思わずに「意外とこう撮ればイケるんじゃないか」と発想を変えることを常に心がけています。
あと例えば外出先でも「ここで撮影したら…」とイメージしたり、「夕日がきれいだな」と写真も撮ったり、常に探していますね。周りから見ると怪しいんですよね、挙動不審というか(笑)。
  この業界の人って面白いんですよ! 雨で撮影が流れて休みになると、皆で映画を観に行っちゃうんです。普段自分達が作っているのに、映像を見るのも好きなんですね(笑)。やりたいことができてご飯を食べられているので幸せです。



今まで数々の連続ドラマの現場で活躍されていたわけですが、中でも未だに思い出に残っている印象的なロケは何ですか?

TBSの『ホットマン』では、監督から特に指定はなくて「どうしようかな、下町風じゃないけど、商店街があるところがいい」と言われて、探していたんですね。その時にたまたま朝日新聞で、「横浜でフィルムコミッションを立ち上げ、地域の活性化のためにとうろく協力をしてくれる商店街を募っている」という記事を読んで、「あ!そっちから責められるな」と思い、初めて横浜のフィルムコミッションに連絡をしました。担当の方も一生懸命紹介してくれて、その中の某商店街に決定したんです。
他にも個人宅での設定もあったので、商店街の近辺からピンポンと1軒ずつ飛び込みでお願いする形で探していましたが、全くイメージに合うところが見付からず、やっと見付けても断られ続けていました。
そんな中、たまたま公園のトイレを出ると目の前に雰囲気のいい家があって、「ここもダメかなぁ・・・」と思いながら台本を見せて話をしたら、「ちょっと考えさせて、甥っ子に業界の人がいるから聞いてみる」って言われて。諦めかけていたんですけど、もう一度指定日に行ったんですね。そしたら、その甥っ子さんというのは某有名タレントさんだったんです! 僕はその方のラジオ番組をずっと聴いていてものすごくファンだった(笑)。
その方に撮影の内容を説明させていただいたら、「そうなんだ、じゃあ(ロケに)貸してあげれば」と言っていただき、とんとん拍子に貸してもらえたんですよ。何か不思議な縁を感じましたね。



―それはすごい偶然ですね! 商店街や住宅街では実際に撮影するのはなかなか難しいと思いますが、その辺りはどうだったのですか?

ロケってどうしても迷惑をかけちゃうものなんですよ。
迷惑をかけるっていうのは通行止めをしなければいけなかったり、夜ライトを使ったりすることですよね。
でもその時は会長さんみたいな各地域を仕切っている方が根回しをしてくださって、ご協力の上で通行止めにして行えました。大きな問題もなく、いつでも協力的な体制のなかで撮影を続行できました。
1番難しいな…と思っていたのが、最終的に家が燃える設定だったため、家に放水をしなくちゃいけなかったんですよ! そうするとたまたま商店街の魚屋さんが消防団で、顔を出して交渉したら「じゃあうちの車(消防車)出していいよ」と言っていただき、実際に水を撒いて撮影することができたんです。撮影の時も、控え室を隣家の方に快く貸していただきましたね。

その時の野次馬役には、近所に住んでいる皆さんに出演していただきました。ロケは勝手にやっていると迷惑ですけど、皆さんと一緒にやっているとお祭りみたいな感じになってすごく楽しいんですよね。キャストさんも理解ある方が多くて、「見たい方はどうぞ」と地元の方もロケを近くで見学していました。そのお陰か横浜のフィルムコミッションの方にも喜んでいただけました。
実はその後も続きがあって、横浜フィルムコミッションの5周年記念の時にお招きいただいて、その某商店街の方達が“シティセールス賞”という賞を受けられ表彰されたんですが、なんと僕も同じ賞をいただいたんですよ!
表彰されるのは恐縮ですけど、同じステージで再会して一緒に表彰されるだなんてすごく嬉しかったですね! この時のロケがターニングポイントというか、僕の発想を変えるきっかけになりました。ロケでは地域を巻き込むと、僕らだけではなくいろんな良いことができるのでは!と思いました。



一緒に表彰されるなんてなかなかない経験ですよね! そんな風に地元の方達と再会できたら感動しますよね。

ロケはたくさんの人がいるので疲れることもありますけど、そんな風にかけがえのない経験ができることがありますね。以前も「撮影させてもらえないか」と個人宅に頼みに行って、出てきたお家の方が「いつもは断るんだけど、今回はいいわよ」とすんなりOKいただいたんです。思わず「どうしてですか?」と聞いたら、「来年はここ壊しちゃうから、記念になると思って。」と言われて。
その時に今僕たちが関わっている映像制作って、“一瞬を記録に残せる仕事”なんだなぁと改めて思いました。こちらも記録になるような映像をお渡したいなと思い、そのお宅をお借りして撮影しましたね。



形にして後に残せる仕事って、素敵ですね。
ところで鈴木さんはたくさんの後輩達を指導してこられたと思うのですが、優秀だと思われる制作進行というとどんなタイプの方ですか?

最初ロケ先で新人に何をさせるかって言うと、トイレ掃除なんです。ロケで借りた所はきれいに返すという精神を教え込むんですね。借りた物をきれいに返すのは人として当然のことなので、そういうことをさせて新人の反応を見るんですけど。
黙々とやってケロっとこっちを見るようなタイプは伸びるんですけど、文句言いながらやるタイプは伸びないですね。そうやって人間性を図るんですよね。優秀な制作進行っていうのは、どこまで先が読めるかだと思いますよ。当日は現場が滞ったら“アウト”なんです。当日自分のやる仕事がないっていうくらいまで何も起こらないようにするのがベストなんですよ。
いろんなケースを考えて、先を読む力があって、自分の判断で動けるという人間ですね。振られた仕事をするのは当たり前で、+αが何かができないと上には上がれません。



では最後に、鈴木さんが今後どうなっていきたい、などの将来の展望がありましたらお聞かせください!

去年独立をして今はフリーなんですが、将来の夢は制作のチームを作って、消耗品として扱われることなく仕事を受けて、自分達のやりたいことができるような環境を作りたいですね。なかなか難しいんでしょうけど。
理想としては、そのチームでロケーションのコーディネートをして、「儲かるわけじゃないけど、お客さんとのネタになるからいいよ」と思ってもらえるような地域で、『ホットマン』の時みたいにその地域に根差した撮影・制作ができれば嬉しいなって思いますね。そのチームづくりは同じ志の人達とやりたいですね。



【インタビューを終えて…】
鈴木さんは撮影当日はヒマで何もすることがないように、事前確認・調整を徹底するそうです。「何かが起こって忙しくなるようでは制作担当としてはダメ」。私が青春時代に見ていた数々の名ドラマに、鈴木さんが関わられていたので感激してしまいした! ここでは書けなかったのですが当時の撮影の裏話など、ついつい取材ということを忘れて聞き入ってしまいました。 鈴木さんのような縁の下の力持ちがたくさん集まって、今日も数々の映像作品が生まれているのだと実感するインタビューでした。ご協力ありがとうございました。

顔写真

制作/Location Manager / 鈴木和晶さんプロフィール

1965年生まれ。東京映像芸術学院に在学中から大船撮影所で働き制作業界へ、株式会社アベクカンパニーに19年所属。現在はフリーランス。制作担当として主にフジテレビの連続ドラマなどに携わる。代表作は、TBS『ホットマン』、フジ『GTO』、フジ『もう誰も愛さない』など。


2009年10月29日

聞き手/山中純子、安黒道晃、斎藤奨

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