
―CMのプロデューサーになられて2年目ということですが、映像業界に入られたきっかけとこれまでの経歴を教えてください。
初めは業界に対して全く興味がなかったんです!
たまたま大学時代に映画館でアルバイトをしていたので、よく映画を観るようになり、(映像業界が)面白そうだと思うようになったんですね。それから大学卒業後にテレビ番組の制作会社に入りました。そこで2年半ほどADとして、ハードなスケジュールの深夜バラエティ番組や、お正月も返上で撮影に参加したりなど、入って浅かった時はわけもわからずやっていました(笑)。
3年近くテレビ番組の制作に関わっていましたが、もっと番組をじっくり作りたいなぁと思い始めたのをきっかけに、フリーランスに近い形で活動した後、今のCM制作会社に入社しました。PM(プロダクションマネージャー)を6年経験し、プロデューサーになってからは2年ぐらいになります。
―玉村さんはテレビ業界にもいらっしゃったとのことですが、AD(アシスタントディレクター)とPMとの役割の違いは何ですか?
他の会社の場合違うかもしれませんが、分かりやすく言うと予算を扱うのがPM、扱わないのがADですね。CM業界では、PMが直接外注業者と交渉をして、プランに基づいたスタッフィングなど作品のバジェットを見ながらどのように構築していくかを考える部分があります。CM業界はある部分までは基本的にPMが担当します。もちろんCMでも、会社やチームによってはプロデューサーが予算管理すべてを扱うこともありますが、大きな違いはそこですね。
―CM制作はどのような経緯で依頼されるのでしょうか?基本的な流れを教えてください。
まずはクライアントから広告代理店へ発注が行きます。そこからは大きく分けて2つのケースがあり、1つ目は複数の広告代理店によるコンペ(コンペティション)が行われ、ベストな企画を提案した会社に依頼されるケース。2つ目は直接依頼が来るケース。クライアントと広告代理店、広告代理店と制作会社、その関係値が高い場合だと、そうなることもありますね。最近では前者のケースがとても多いですね。
おそらく広告代理店さんからすれば、化粧品会社さんがクライアントだとすると「クライアントさんの意図がこうだから、ここの制作会社は化粧品をいっぱい手がけている実績があるからここにしよう」とか、「この監督さんがいるからここにしよう」とか、そういう視点で制作会社を選ばれているんだと思います。
―具体的にどのようなスケジュールで制作されているのですか?
場合によってという感じですね。例えば、新商品を1年間じっくりと時間をかけて準備をして制作する場合もあれば、時期商品の売れ行きが気象の影響を受けているところで別商品を売り出そうと突発的に発生する場合や、決算期直前に発生した予算を使って2~3週間で仕上げるという急な場合もあります。僕の場合ですが、企画の立案から3~4か月で納品という期間が一番多いように思います。例えば企画に1か月半、撮影準備に1か月から1か月半、残り1ヶ月で撮影と編集をするといった流れなります。
スケジュールの中で特に時間をかける部分が、クライアントとの確認作業ですね。
CMは我々の一念だけで作り上げるものではなく、クライアントの希望しているイメージを具現化するものです。先方が望むイメージとこちらが提案するイメージに少しでも違いが出ないように、撮影の準備期間で何度も何度も打合せを行います。規模や状況によりますが、セットを作る場合はCGでセットプランを提示したり、衣裳も事前に何パターンもの現物を揃えて見てもらうなど、できる限り具体性を持って提案します。
撮影当日に少しでもズレが生じてしまうと大変なことになってしまいますから、事前準備は徹底します。CM業界ではほぼ必ずと言っていいほど、PPM(プレ・プロダクションミーティング)というものを行います。撮影直前に冊子を作って、クライアント、広告代理店、制作会社の責任者から制作スタッフ間で最終確認のミーティングも細部にわたって行うわけです。
―撮影の直前までそうとう綿密な確認・準備をされているのですね!
プロデューサーとしては具体的にどういうことをされているのですか?
自分から「この仕事はこういうコンセプトでいく」ときちんと発信して、50人スタッフがいれば全員にそれらを浸透させて、最後までブレないようにコントロールすることが重要な役割のひとつですね。
プロデューサーの仕事を形容すると「学級委員」、「音楽で言うアレンジャー」、「会社の経営者」とか色々な例え方がありますが、僕の場合はスタッフ全員を同じ方向へ向けさせる“船頭”でなければならないと思っています。
クライアントの方、広告代理店の担当者の方から監督、撮影部、照明部などで平均してスタッフ総数は50~60人はいるのでそれぞれの都合に合わせたスケジュール調整もしますね。
―プロデューサーになられても、玉村さんは自らロケ場所を探されるそうですね!
今はどのように探されているのですか?
基本的にロケ場所探しは制作部がやることが多いのですが、僕は自分でも何か考えて出したい方なので、(企画の)材料を集めるためにも探しています。やっぱり自分で現場に行かないとクライアントさんへの提案はしにくいですしね。
探す時はまず“ロケなび!”を見てますね。掲載されている大型施設は、使い勝手がいいところが多いです。普段は移動時に周りを気にして見ているのと、同業者の口コミや紹介もありますし、プライベートでも友人の結婚式に出席すれば2次会会場とか「ここいいかもな」という目線で見たりしますね。
CM撮影は人数や機材が多く、ある程度広さがある場所でないとやりにくいんです。照明もかなり大きいものを使うので電力も気にしますし。以前はセットを作って撮影することも多かったのですが、不景気の影響か僕の周りではここ最近かなりロケが増えたように感じます。
―プロデューサーの素質としてはどんなものが求められるのでしょうか?
また毎回の制作のなかで、なかでも玉村さんが常に意識されていることがあれば教えてください。
求められる素質としては、僕が勝手に思っていることなんですけど “(制作の)全体像がパッと頭に浮かべられること”だと思います。でないと、調整に悩む事もできないわけですし。それから一番大事なことは、対外的に良いと思われるかどうかを常に意識すること。
あとは「こうすることがベストだと思いますよ」と自信を持って言える“自分なりに考え尽くした案”を用意しておくことです。自分が自信をもって言えるものを常に模索していく。“我”のつもりではないですけど、考え尽くすっていうのはそういうことですよね。まぁ言えない時もあるんですけど(笑)
そういった細かいことも含めて、楽しんで仕事ができる人は評価されていくと思います。
僕の思いとしてはクライアントさん広告会社さんに喜んでもらうということと、やはりCMをパッと見てくれた人に「面白い!」と思ってもらえることが一番大事です。テレビの合間のCMってだいたいは、「ぼや~っ」と見ている人が多いじゃないですか。客観的に見ていた人が、そのCMを見た時に“高揚感”を感じて欲しいと思っています。
高揚感を感じるということは、「あ、これ欲しい!」とか「あ、この会社ってこんなことやってるんだ!」とピンとくることにつながっていると思うんです。僕の言葉でいうとそれを「WOWな感じ」と呼んでるんですけど(笑)それはいろんなオーダーがある中でも守りたいなと思っています。
では最後に、今後目標とされていることや将来の夢などありましたら教えていただけますか?
―今は方向転換は全く考えてないので、これからもCM制作を続けていきたいと思っています。自分が本当に100%納得できた、高揚感を感じるCMというのは、今は年に1本くらいなんですね。もちろん毎回100%を目指して頑張っていますよ!
でも僕もまだまだですから毎回は難しい。今後は関わるすべての仕事でそう言えるようにしていきたいと思っています。
【インタビューを終えて】
CMで高揚感を感じさせたいという視点は非常に面白いなと思いました。確かに玉村さんが関わられたCM作品をお聞きすると、プッと吹き出してしまうものやインパクトがあったものばかり! たった1分にも満たない世界で、見ている人をグイっと引き込みアクションを起こさせる。撮影に至るまでに1ミリもズレがないように確認や準備を行う作業は、恐らくCMの制作が1番時間を割いているのではと思います。 ご協力ありがとうございました。
株式会社シースリーフィルム / 玉村亮太さんプロフィール
1976年7月16日生まれ。東京都出身。明治学院大学卒業後、TV番組制作会社を経て、その後株式会社シースリーフィルムに入社。2008年からプロデューサーとして、様々なジャンルのCM制作に携わっている。 株式会社シースリーフィルムの情報はこちら。
2009年12月 1日
聞き手/山中純子、安黒道晃、斎藤奨